オレンジジュース[短編集]
「はぁー…今日は雨か~…」
ため息を漏らし、どこまでも続く曇り空を見上げる。
プロデュースされてもうすぐ一ヶ月、少しは女らしくなった…と思う。
髪の毛にはちょっとふわゆる感を持たせ、教えてもらったナチュラルメイク。笑顔の練習だってたくさん重ねている。
──たまに言葉遣いは戻るけど。
「おっ?進がいる」
ふと下駄箱の陰から進の姿が見えた。
「しー…」
名前を呼びかけて、はっと慌てて口を塞いだ。誰か他にいる。
ちょっとずつ近づきながら恐る恐る見てみると、進の目の前には女の子がいた。
「す…好きですっ!!」
「!!」
しかもまさかの告白真っ最中の現場だった。
────ドクン。
なんだろう…。何とも言えない胸騒ぎがした。何故だか分からないけど胸が異様にドキドキする。
慌てて自分の下駄箱に駆け寄り、ローファーに履き替えて走り出していた。
視界の端に一瞬、こちらを向いた進の顔がうつった気もしたけれど、そんなことを振り払うように無我夢中で走った。
「ハァッ…ハァッ…わっっ!」
とりあえず走っていただけのあたしは誰かにぶつかってしまっていた。
「ごっ、ごめんなさ…っっ!!」
顔をあげて驚いた。
相手は何を隠そう、久我くんだったのだ。