九十九怪怪
「……家は何処なんだ」

「は?」


いきなり、脈絡のない振りで思わず聞き返す。

「だから家は何処だ。送ってやる」

「え!いや、だっ、大丈夫です!一人で帰れますから!!」


急に親切になったのに驚いたが、送られる理由もないので手をブンブン横に振って、拒否する。そんな私を見て、男は眉をしかめる。

「大丈夫なんかじゃないだろう。アンタ迷ってるんじゃないのか?」

「あ……、」

しまった。そういう設定だった。内心、冷や汗をかく。だが自分で吐いた嘘なので、仕方なくじゃあお願いしますと軽く頭を下げた。
すると、急に体がフワッと浮いた感覚が生まれた。膝の裏と脇に体温を感じて、とっさに顔を上げると何故かすごく至近距離に男の顔があった。やっと、男に抱き上げられていることを理解する。それもお姫様だっこ。
顔に体全部の血液が集まった気がした。


「なっ!ちょっと、下ろしてください!!」


「うるさい。こっちのほうが速いんだ」


何故か、飯綱にはうるさいのあとにこの人間風情がというのか聴こえた気がした。
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