九十九怪怪
「早く、家へ帰れ。完全に夜が明けるぞ」

「あ……、ホントだ」



言われて、視線を東へ向けると確かにもう太陽は地平線から三分の二も出ていているのに気が付いた。吸血鬼は、眩しそうに同じように其方を見つめていた。やはり、吸血鬼だから太陽の光には弱いのだろうか。それとも、これも御伽噺に過ぎないのか。
じっと、彼を見つめた。


「あ、あの…」

「?…なんだ?」


男は不思議そうに横にいた私に顔を戻す。
そして、私は口を開く。


「――助けてくれてありがとう」


何故だか、言いたかった。
彼の横顔を見ていたら、言わなきゃいけない気がした。


すると、彼は


「――別に」


此方から目をそらして、ポツリとそう言った。
ツンデレだ。そう思うと何だか、可笑しかった。
そして、また本当にありがとうと言い、別れた。
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