九十九怪怪
「俺も聞いた」


一言、百々目鬼が低い声で同意する。


「それ、天邪鬼(あまのじゃく)が言ってたんじゃなくて?」


吸血鬼が日本に居る。
それが何故か、現実味を帯びていないように感じて、私は下等の妖怪噂好きの天邪鬼のせいにしようとする。
しかし、


「いや、天邪鬼からじゃない。本当に風の噂だ」


百々目鬼は、きっぱりと違うと断言した。彼がそう言うならそうなのだろう。彼は妖怪の中でも信頼のおける奴だ。
それに、風の噂とは私達でいうと鎌鼬(かまいたち)の情報のことで、結構、信憑性もあったりする。

じゃあ、ほんとなんだ。
自身の長い髪をいじりながら、感心する。


「…二人が、そう聞いたならそうなんでしょうね」



やっぱり西洋の妖怪達は麗しいのかしらと、骨女は私の肩を両手で揺さぶる。そんなの知らないし、骨が肩に食い込んで痛い。
骨しかないのに、どこからそんな力があるんだか不思議なのだが。
私は、彼女を睨みつけた。
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