九十九怪怪
邂逅-であい-
案の定とはこういうことを言うのか。冷や汗が額を流れた−
妖怪学校を出て、山道を歩いていた私。普段は鼬の姿に変化してこの山を駆け抜けることが多いが、今晩は、授業が何時もより早めに終わったこともあり、人間のままで帰路に着いていた。
今日に限って、だ。後悔先に立たず。気付いた時には、異様な雰囲気が場に漂っていた。
私が半妖だから、こんな囲まれるまで気付かなかったのではない。こんな気配を今までに感じたことなどなかったのだ。だから、反応するのが、遅れてしまった。
異質な妖気。何人いるだろう。5、6人だろうか。
管狐になれば、逃げる体勢は作ることは出来るが、変化する隙を与えてはくれなそうなくらいの視線を四方から感じるのだ。
ザッ……
誰かが足を踏み出した。私の目の前の気配だった。
「お嬢ちゃん、ちょっといいかい?」
いや、良くないと声を出しそうになって直ぐに飲み込む。
月明かりに晒されてその姿が顕わになった。
ああ、やっぱり−。
案の定、目の前の男は吸血鬼だった。物語の中でしか見たことはないけれど、わかる。
だって、その鋭利で立派な牙を全く隠そうとしていない。それどころか見せびらかすように、ニヤニヤと嫌らしげに笑っている。
何故、話をしたその日なのか。噂をすればなんとやらとはこの事か。
運が悪い。
実に運が悪い。
他の吸血鬼達も森の茂みから姿を現した。四方八方から出てきて、予想通り、6人だった。
そんなことが当たっても何にも嬉しくはないのだが。
じりじりと彼らが作り出した円は狭まっていていて、私は中心に追い込まれる。
まずい。
「血をっ、よこせぇぇぇ!!」
いきなり、グワッと更に牙を剥き出しにして一斉に吸血鬼達が襲いかかる。
もう駄目だとその場にしゃがみ込み、きつく目を瞑る。