月と太陽の事件簿13／アルテミスの翼

お前の翼を…

翌日。

あたしと湯月くんは達郎兄ちゃんに連れられ、都内にある「エンゼル・スタジアム」へ向かった。

スタジアムといっても大規模なものではない。

収容人数は500人ほどのフットサル専門の屋内球技場だ。

あたしたちは今日ここで、藤本翼と顔合わせすることになっていた。

なぜフットサル場で顔合わせなのか。

藤本翼がＣＭでフットサル選手を演じていることは述べたが、彼女は実際に、フットサル選手として活躍しているのだ。

とはいっても、藤本翼はプロや社会人リーグの選手ではない。

彼女が活動の場としているのは「プリンセス・リーグ」。

通称Ｐリーグと呼ばれる芸能人女子フットサルリーグだ。

「なんでわざわざ芸能人がフットサルやるんだろうな」

「知らないわよ、そんなこと」

呑気につぶやく達郎兄ちゃんとは対称的に、あたしは心臓がバクバクしていた。

なんせ芸能人と会うなんて、生まれて初めてのことだもの。