月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
隣の湯月くんに至っては、さっきから一言も発しない。

スタジアム内の関係者専用ロビーに通され、ソファに腰掛けて5分。

たった5分しかたってないのに、手のひらは汗でびっしょり。

こ、こんな感じでボディーガードがつとまるのだろうか。

「お、きたきた」

ハッとなって、達郎兄ちゃんの声と視線を追う。

こちらに向かってくるスーツ姿の男性が見えた。

藤本翼のマネージャーだろうか。

年は三十代半ば、ぴっちりとした横わけに、眼鏡がよく似合う。

やり手のビジネスマンといった感じだ。

「あの人は杉田さん。今回の依頼人だ」

達郎兄ちゃんが教えてくれた。

…てことは、あの人が事務所の社長さんか。

藤本翼の所属する事務所は、そんなに大きくないって聞いたけど、社長自らマネージャーやってるのかしら。

「小さい芸能事務所だから、杉田さんは一人何役もこなしてるらしい」

ふーん、ってアレ?

「なんであたしの考えてる事わかるの!?」

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