月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
ロッカー、メイク台、鏡の裏、イスetc…をチェックする。

「異常はないようです」

「わかりました。じゃあ翼、着替えなさい」

「はい」

翼さんが着替える間、あたしたちは楽屋の外で待った。

「あそこまでする必要あるの?」

あたしは素朴な疑問を口にした。

「用心しておくにこしたことはない」

黒手袋をはずしながら達郎兄ちゃんは言った。

「でも逆に翼さんが不安がるんじゃないんですか?」

湯月くんの言葉にあたしもうなずく。

「翼は真面目でいい子なんだ」

杉田さんは煙草をくわえながら言った。

「周囲が自分のために一生懸命になってくれてる-それなら自分はそれに応えよう-そういう考え方をする子なんだ」

だからこれはけして間違ったやり方ではない。

杉田さんはそう言いたげだった。

うーん…。

言いたいことはよく分かるけど、結局は翼さんにプレッシャー与えることになるのよね。

「翼さん、潰れちゃいませんか?」

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