月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
「…今回の事は気の毒だと思う。でも、この業界で生きてくには必ずプレッシャーが付きまとうんだ。これで潰れたら、最初からこの業界には向いてなかったと…冷たいけど、そういう言い方になる」

はー…。

芸能人って大変だわ。

「あたし芸能人にはならないでおこっと」

そう独り言をつぶやくと、杉田さんは

「おや残念」

と笑った。

「旭さんと言ったね。今回の件が片付いたら、スカウトしようと思ってたんだが」

「へ?」

目が点になるのがわかった。

「どうだい、うちのレッスンだけでも受けてみないかい?」

「あ、あたしがですか!?」

思わぬ申し出に、あたしの頭の中は混乱状態に陥った。

「どどどどどうしよう、達郎兄ちゃん!?」

「『ど』が多すぎ」

「いやそこ突っ込まなくていいから!」

「落ち着け、カホ」

ぐにゅん

また鼻をつままれた。

「お前が芸能人になれるわけないだろうが」

うきゅー…。

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