月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
スタジオ内に突然、怒声が響き渡った。

声のした方を見ると、若い男の人が物凄い勢いで怒られていた。

「あぁ、またやられてるな、水島くん」

杉田さんは気の毒そうに言った。

「あそこで怒鳴ってるのは監督の永岡さん。怒られてるのはADの水島くんだ」

監督は40歳ぐらいのヒゲ面の巨漢。

ADはまだハタチぐらいのヤセ型の男の人。

外見だけで、その上下関係は想像できた。

「厳しい人だからなぁ、永岡さんは」

「にしたって、あれは怒り過ぎかと思うんですけど」

水島というADは、まだ怒られている。

隣の湯月くんは、自分が怒られているかのように顔をしかめていた。

「トラブル続きで撮影がおしてるからね。みんなピリピリしてるんだ」

「でもそれだったら、怒ってないでさっさと撮影を始めればいいのに」

あたしは頭ごなしに怒鳴りつけるという行為が、生理的に嫌いだ。

いま思えば、湯月くんのような草食系を彼氏にして正解だったかも。

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