月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
達郎兄ちゃんが言うと、杉田さんは苦笑しながら肩をすくめた。

「ウチみたいな弱小プロはとてもとても…」

その時、にわかにスタジオが動き始めた。

どうやら撮影開始のようだった。

それでも、カメラはまだ回らない。

台本片手の演技指導、カメラワーク決め、照明の加減など、撮影前にやるべきことは山のようにあるようだった。

「なかなかカメラ回りませんね」

「どこもこんなもんさ」

杉田さんはさすがに慣れっこという感じだ。

「たった数十秒のCMを撮るのに、とんでもない時間がかかるんだ」

あーなんか、いかにも芸能界って感じだわぁ。

「ちょっといいですか」

隣の湯月くんが床に座り込んだ。

「すみません、なんかしんどくて…」

「大丈夫?」

あたしは屈み込んで湯月くんの様子を伺った。

朝から緊張の連続で、立ちっぱなしだったから、具合が悪くなっても仕方ない。

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