月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
「達郎兄ちゃん」

「こっちは気にしなくていいから、外で休ませてやれ」

達郎兄ちゃんの横で、杉田さんもうなずいてくれていた。

あたしはその言葉に甘えて、湯月くんの手を取った。

「じゃあ、本番いきまーす!」

背後で、スタッフの掛け声が聞こえた。

撮影を見てたい気持ちは大いにあったが、今は湯月くん優先。

あたしは湯月くんの手をひいて立ち上がると、スタジオの扉を開けた。

「本番5秒前!4、3、2、1…!」

次の瞬間、すさまじい衝撃音がスタジオ内に響き渡った。

「翼!!?」

杉田さんが駆け出した。

達郎兄ちゃんも走る。

あたしと湯月くんは一瞬見つめあった後、二人に続いた。

「どうしたんだ!?」

大勢のスタッフが駆け寄ったそこには、床に座り込んだ翼さんがいた。

そこから30センチも離れてないところにあったのは、さっきまで天井にぶら下がっていた巨大なライト。

砕け散ったその姿が、衝撃の大きさを物語っている。

< 41 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop