月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
がんばる女(ひと)
楽屋の椅子に座ると、翼さんは大きなタメ息をついた。

そしてそのまま放心状態になる。

まるであたしたちの存在を、忘れてしまっているかのようだ。

何か飲めば、多少は落ち着くかも知れない。

そう思ったあたしは、飲み物を探した。

テーブルの上に、スタッフが用意したと思われるペットボトルのお茶があった。

そばにあった紙コップにお茶をそそぎ、翼さんに渡そうとした時、ふと思った。

このお茶、達郎兄ちゃん調べてなかったよね…。

あたしは隣の湯月くんを見た。

先ほどまでの青い顔から一転して、その顔は紅潮していた。

あんなハプニングを目の当たりすれば、ドキドキして当たり前だろう。

「はい、湯月くん」

あたしは紙コップを手渡した。

「あ、ども」

興奮で喉が渇いていたのか、湯月くんは受け取ったお茶を、一気に飲み干した。

よし、大丈夫。

あたしは別のコップにお茶を注ぐと、翼さんにそれを渡した。

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