月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
初対面のあたしらがくっついてても、仕方がないもんね。

「で、どうだったの、現場は?」

達郎兄ちゃんのポケットから黒い絹の手袋がのぞいていた。

どうせそしらぬ顔で、あちこち調べていたに違いない。

達郎兄ちゃんは、あたしの問いかけにはすぐには答えず、スーツの内ポケットに手を入れた。

「ざっと見た限りだが、何とも言えない」

言いながら取り出したのはロッテのToppo。

そこから一本取り出すと、残りを箱ごとあたしによこした。

あたしは箱から一本取り出すと、湯月くんに渡した。

むろんあたし自身も一本もらう。

「意図的な細工が行われたとしても、スタジオに出入りした人間がやたら多いんだ」

達郎兄ちゃんはToppoをかじりながら言った。

「撮影スタッフ、出演者とその関係者、スタジオスタッフに出入りの業者…これという人物を特定することは、はっきり言って不可能だろうな」

…。

なぜだろう。

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