月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
結局、撮影が終わったのは夜の8時過ぎ。

しかしまだ、数カットほど残しているそうだ。

何パターンか撮影して、スポンサーに判断を仰ぐためらしいが、それにしても大変だわ。

「時間は大丈夫か、湯月くん?」

時計を見ながら達郎兄ちゃんは言った。

「親には保護者つきのバイトだって言ってるんで、大丈夫です」

湯月くんの両親には一回だけ会ったことあるけど、2人ともホンワカとして湯月くんに似ている。

息子の言うことは少しも疑わないんだろうな。

ま、湯月くんは嘘なんて言える人じゃないけど。

ちなみにあたしの家も達郎兄ちゃんがついてるならと、今回は門限なし。

司法一家に育った達郎兄ちゃんに対する信頼は絶大なのだ。

「悪いが、もうしばらく付き合ってくれ」

そう言われて向かった先はエンゼルスタジアム。

つまり最初に来たところに逆戻りしたわけだ。

今日の試合は、もうとっくに終わっている。

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