月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
横合いから一人の女性が現われた。

タイトなジーンズに、白黒の縞シャツ姿。

どこかで見た顔だなと、あたしは思った。

「あ、高野さん」

翼さんの言葉で思い出した。

高野昌子。

学生時代は陸上部に所属し、短距離で全国優勝をした異色の経歴を持つタレントだ。

オリンピックをけり、まさかの芸能界入りした時はそれなりに騒がれたが、ここ最近は全く顔を見なかった。

そういえば、昼間の試合で翼さんと同じチームにいたような…。

芸能人フットサルで活躍していたのか。

「高野さん、どうしてここに?」

「忘れ物を取りに来たのよ」

高野昌子はそう言って髪をかき上げた。

「藤本さんも大変ね。スタジオと行ったり来たりで自主トレでしょ?」

「あたし、合同練習には参加できないから…」

「売れっ子ですもんね」

ピン、と硬い空気が張り詰めた。

高野昌子の言い回しのせいに違いなかった。

「ま、せいぜいチームの和を乱さないようにね」

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