月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
達郎兄ちゃんにそう訊かれ、湯月くんはうなずいた。

「コーヒーも飲みますけど、紅茶の方が好きです」

「オレもコーヒー党を気取ろうとした時期あったけど、正直、口に合わなくてな」

達郎兄ちゃんは大の甘党だから、ブラックやモカは苦手なんだろう。

キャラメルマキアートが限界だったりして。

「ミステリファンというか、ホームズファンならコーヒー党でいきたいとこなんだがな」

「でも【バスカヴィル家の犬】の時には、ホームズは一日にポット2杯の紅茶を飲んでましたよ」

湯月くんがそう言うと、達郎兄ちゃんは笑った。

「よく覚えてるな」

「最初に読んだミステリーの長編でしたから」

これも付き合いはじめて知ったことだが、湯月くんは大のミステリファンだった。

カバンの中には常に一冊のミステリー小説が入っている。

あたしも一冊貸してもらったことがあるが、扱ってる事件すべてがバラバラ殺人という、とんでもない短編集だった。

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