月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
「ま、そんな技術を持った人間が、この国にいるとは考えにくいけどな」

「おどかさないでよ!」

あたしは時計を投げつけそうになった。

「でも一体誰がそんなことを…」

杉田さんは額に汗を浮かべながら言った。

「先ほども言いましたが犯人の狙いはCMの主役です」

達郎兄ちゃんはそう言った後で、

「ですが、現段階では何とも言えません」

と続けた。

「なんで?犯人は主役を狙ってるんでしょ?だったら一人しかいないじゃない」

あたしは暗に浜口理子の名をほのめかした。

「こんなことをしてまでか?」

達郎兄ちゃんは貼紙と爆弾を指した。

「主役を奪ったところで、その方法がフェアじゃなければ、批判されるのは向こうだ。このCMの主役ってのはそんなに魅力的かね?」

ギャラ数十億のハリウッド映画じゃあるまいし、と達郎兄ちゃんは首を振った。

「じゃあ誰が何のためにこんな事するの?」

「それは犯人を捕まえてみないとわからない」

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