月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
うろたえた声で湯月くんは言った。

『ど』が多すぎ、なんて言ってる場合じゃない。

どーしたもこーしたも、泣いてんだよ翼さんは!

翼さんがハンカチから顔を離すと、その目は真っ赤だった。

「ごめんなさい」

一度しゃくりあげてから、翼さんは頭を下げた。

「昨日までは何とかこらえられたんだけど、今日はちょっと」

その瞳に、再び大量の涙が浮かぶ。

「あんなCM出てるのにこれじゃカッコ悪いよね…」

「カッコ悪くなんかないですよ」

自然と言葉が出た。

「こんな目にあったら、誰だって泣きます」

脅迫状を送られ、様々なトラブルに見舞われ、今日に至っては爆弾まで仕掛けられた(ニセモノだったけど)。

これで泣くなという方がおかしい。

「翼さん、泣いていいです。あたし、他の人には絶対に言いませんから」

翼さんはキョトンとした顔であたしを見ていた。

翼さんの目に、今のあたしの表情はどんな風に映ってるんだろう。

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