月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
爆弾を抱えたまま、すさまじい表情で、こちらに一歩一歩近付いてくる。

背中に冷たいものがさっと走った。

どうしよう、動けない!

その時、湯月くんがあたしの手を握った。

暗闇に慣れたあたしの目は、湯月くんの口が動くのを見た。

『大丈夫』

口は確かにそう動いた。

でも声になってないし、湯月くんの目は泳いでるし、そもそも何を根拠に大丈夫と言っているのかわからないし!

必死にあたしを守ろうとしてくれてるのはうれしいんだけど、絶対に現状打破の方向には向かってない!!

そうしてる間にも犯人はどんどん近付いてくる。

『もうダメ!』

そう思った時、楽屋のドアが勢いよく開き、達郎兄ちゃんが楽屋に飛び込んできた。

「カホ!」

達郎兄ちゃんの姿を見とめた犯人は、爆弾を達郎兄ちゃんに向かって投げつけた。

そして奇声をあげながら楽屋から飛び出そうとした。

しかし達郎兄ちゃんは、犯人の首根っこを掴むと一瞬の内に組み伏せた。

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