月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
以来、湯月くんから本は借りてない。

思い出せば、卒業間際に湯月くんからもらった手紙…あれって暗号だったのよね。

その解読を達郎兄ちゃんに頼んで、それがきっかけで湯月くんと…。

いかん、思い出しただけで顔が赤くなってきた。

「どうした、カホ」

こういう時だけ目ざとい達郎兄ちゃんが、あたしの顔をのぞき込む。

「なんでもない!」

あたしはあわてて首を振った。

「と、ところで話って何なの?」

必死に話を戻す。

「うん、実はな…」

達郎兄ちゃんは何か記憶を探るように、こめかみを叩いた。

「あ、思い出した。お前ら、藤本翼って女性タレント知ってるか?」

「知ってるわよ」

「知ってます」

あたしも湯月くんもうなずいた。

「有名なコなのか?」

逆に訊いてくる達郎兄ちゃん。

「有名よ!」

あたしはムキになって言った。

何を今さらという気分だった。

藤本翼は今いちばん話題になってるタレントだ。

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