月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
翌日のエンゼルスタジアムも、満員の観客と熱気で満ちていた。

サイドラインを割ったボールが、あたしの前に転がってくる。

あたしはそれを足で止めると両手で拾いあげた。

両手にボールを抱えた男性スタッフが、一個をフィールドに放る。

そのスタッフは昨日と同じスタッフだった。

彼はあたしと目が合うと、軽く頭を下げた。

つられてあたしも頭を下げた。

ADの水島が逮捕され、あたしたちは二日間のボディガードを無事につとめあげた。

今日のPリーグ観戦は、御礼として杉田さんに招待されたのだった。

「水島は、浜口理子のファンだったんだと」

熱戦が繰り広げられるフィールドを眺めながら、達郎兄ちゃんが言った。

水島はCM撮影で浜口理子と仕事が出来ることを心底喜び、一日でも長く彼女と一緒にいたいと思った。

「それで水島はトラブルを起こして、撮影を遅らせたんだ」

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