月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
翼さんを含む関係者各位の意向もあって、捜査は秘密裏に進められているが、水島が脅迫状を送っていた形跡はなかった。

当然、差出人に関しては、容疑者すら浮かんでない状況だ。

つまり、事件は完全に解決したわけではない。

芸能やフットサルに興味のない達郎兄ちゃんが、今日の招待を受けたのはそれ故であった。

「何か見落としてる気がするんだ」

フィールドを見つめながら、達郎兄ちゃんは唇を尖らせた。

「買ってきましたー」

ジュースを買いに行っていた湯月くんが戻ってきた。

自分用に午後ティー、あたしにCCレモン、達郎兄ちゃんにはカフェオレ…つまり缶コーヒーを渡す。

「お前の居場所で、お前の翼をもぎ取ってやる、か…」

達郎兄ちゃんは、脅迫状の文面をそらんじた。

その時、審判のホイッスルが鳴り響いた。

見ると、ハーフライン付近で、翼さんが相手選手に倒されていた。

「あ、もしかして…!」

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