月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
ファウルはプレイの延長にすぎなかったらしく、翼さんはゆっくりと立ち上がった。

相手チームへのブーイングが、スタジアム内に充満する。

「どうした、カホ」

あたしの発した言葉を、達郎兄ちゃんは聞き逃していなかった。

「ねぇ達郎兄ちゃん、脅迫状にあった【お前の居場所】って、このスタジアムのことじゃないかな?」

「どういうことだ?」

「だって、翼さんはフットサルのおかげで人気者になれたんだよ」

あたしは一昨日、スタジアムで翼さんから聞いたエピソードを、達郎兄ちゃんに話した。

翼さんが大事に思っているフットサル。

それは間違なく翼さんの居場所だろう。

翼さんを憎いと思うのなら、そのフットサル中に危害を加え、身も心にも深い傷を与えようとするのではないか。

「カホの言う事にも一理あるな」

そう言ってうなずいた後、達郎兄ちゃんは再び唇を尖らせた。

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