Frozen Love
学校だって楽しいとは思えなかった。
大グループの会長の息子というだけで恐れられ、避けられたり、興味本位で近づいて来られたりした。
一度近寄って来て、俺のことをチヤホヤしたやつも俺が少し冷たく当たるとすぐに離れていった。
あいつらが見ていたのは俺じゃない。
やつらが見ていたのは“藤崎グループ会長の息子”だった。
高校1年の春、入学式の日の放課後、初めて君を見た。
沈む夕日の中、散ってゆく桜を悲しそうな顔をしながら君はひとりこう呟いた。
“雪みたい”と。
君がどういう意味でそう言ったのか本当のところは分からない。
けれど雪はすぐに溶けて消え、桜の花はすぐに散ってしまう。
儚いという点で似ていると言ったのだと思った。
これが俺と由綺の出会いだった。