鉄壁魔王と勇者
と、突然勇者は魔王の腕をつかみ、壁に押し付けた。

「はい、ルシェちゃん捕獲〜♪」

「なんのつもりだ?」

自由を奪われた魔王は、流石に不快そうに勇者を見上げる。

戦っている時などは、一定以上距離をとり、捕まらないようにしているのだが、今回は完璧に油断していた。

魔法を使おうにも、距離が近すぎ、そもそも魔法には動作が必要なので、拘束された状態ではままならない。

魔王は強いとは言え、ただの腕力では、男である勇者にはかなわない。

今も、振りほどこうと手に力を入れたが、勇者の拘束はピクリとも揺るがなかった。

勇者は片腕しか使っていないというのに。

「何って、そりゃ、こうするの」
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