苦くて甘い恋愛中毒

女の涙と男の本音



急に唇を離されたかと思うと、体にかかっていた負荷がなくなった。

私を解放すると、あとは見向きもせずに部屋へと入っていく。
その場に呆然と立ちつくしたままの私に、部屋から顔を出して声をかける。

「そんなとこ突っ立ってないで、中入れば?」

その声はやっぱり不機嫌なまま。

なんなの?
無理矢理あんなことしておいて、そのまま放置? 

不機嫌になりたいのは私のほうだ。


リビングへと繋がるドアを、怒りに任せて乱暴に開く。
突然のことに驚いているのが見て取れる。

「お前、人ん家のドア壊す気?」

「……どういうつもり?」

私の言葉に、わけが分からないとでも言うように、ため息をつく。


「いったいなんなのかって聞いてんのよっ!!」

「なにいきなりキレてんだよ。今日どうしたわけ? おかしいだろ、お前」

いきなり怒鳴りだした私に、至って冷静な言葉を返してくる。

こんなときでもポーカーフェイスを崩さない。


おかしくなんかない。
おかしいのは、要。
あなたの方でしょう?


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