苦くて甘い恋愛中毒


「お前ってさ。いっそ腹立つくらい泣かなかったよな」

意地の悪い顔を見せながら、煙と一緒に失礼極まりない台詞を吐く。

なにがそんなに楽しいのかと怒鳴り付けてやりたくなったが、いちいち構ってなんかいられない。


「そこらの安っぽい女とは違うんです。涙を武器にしたりなんかしないから」

先ほど泣きながら文句を言ったことは棚に上げて、精いっぱいの強がり。

「そんなこと知ってる。違うどころか、そこらにはお前みたいな女は転がってない」

この男は、こうやってたまに、最上級の言葉で私を表現する。
不意に見せるこういうところにどうしようもなく囚われて、抜け出せなかった。


「だから、そういうのが……」

「まあ、言い換えたらかわいげないってことだけど」

私の言葉を無理矢理遮って、あそこで止めてくれたらいいものを、わざわざ勘に触ることを言う。

「もうなんなの! ケンカ売ってるの?!」

「売ってないって。褒めてんだろ」

「どうすれば、褒め言葉に聞こえるって言うのよ!」

「実際、かわいげがないのは事実だろ。お前はなんでもかんでも我慢しすぎなんだよ」


 そんなこと言ったって、そうするしかなかったんじゃない。

どんなに我慢してでも要の側にいたかった。
どうして、そんなことくらい分かってくれないの。


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