苦くて甘い恋愛中毒


「菜穂。お前、英語話せたっけ」

脈絡のなさすぎる問い掛けに、またも間抜けな声を出しそうになった。

この男と会話を成立させることは本当に困難だ。
むしろ、不可能といってもいい。

まあ、今に始まったことじゃないけど。


「おっしゃる意味が分からないんですけど」

「日本語も分かんないの? それじゃ英語も無理そうだな」

やっぱり、馬鹿にしてるんじゃない! 
今度こそケンカ売ってるでしょ!!

「日本語くらい分かるわよ! 言ってる内容が理解できないって言ってるの!」

なにがおかしいのか。
私がヒステリーを起こしているのを見て、それは楽しそうに喉を鳴らしている。

本当に、いちいち腹の立つ男だ。

「だから、英語話せんのかって」

「一応、日常会話程度なら……」

大学時代に外国語は必修だったし、夏休みに1か月間くらいオーストラリアにホームステイした経験もある。
そんな短期間じゃ英語力が格段に上がる訳でもなく、今じゃまったくの思い出となってしまったけど。

でも、それがなんだっていうの?


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