苦くて甘い恋愛中毒


「まあ、それならなんとかなるか」

「ねぇ、なんなの? なんの話?」

「年明けから海外赴任になった。ロンドンなんだけど、お前も行かないか」

「行くって……ロンドンに? 一時的に、じゃないよね?」

「そう、短くても数年。仕事は……、やめてもらうことになるけど」

なに、これ。
話が唐突すぎる。


「ちょっと……いきなりすぎて状況が読み込めない」

「なんで? 簡単なことだろ。ロンドンに行くことになったから、お前も一緒に来てって、ただそれだけ」


だから、どうして私が要についていくのよ。
そう言いたいのに、いきなりのことに動揺して、なんと言ったらいいのか分からない。

それでも、要はそんな私の思いを汲み取ってくれたようだった。


「行くのは別にいいんだけどさ。お前がいないと困るから」

「……どういう意味?」

私がいないと困るって、普通に受け取ったらこの上なくうれしい言葉だけど、自分の都合のいいように解釈して、そうじゃなかったときの虚しさは、誰よりも分かってるつもりだ。

「そのまんまの意味だよ。だってまさか、年に何回もお前を向こうに呼びつけるわけにもいかないだろ」


視界から急に色が消えた。
つまり要は、勝手のいい家政婦として私を連れてくって、そう言ってるようにしか聞こえない。

「……そんなはるばる遠くの国につれてってまで、私を都合よく扱うつもりなの?」

そのために、私に仕事も何もかも捨てろって、そう言ってるの? 
本当に、この男は私をなんだと思ってるのだろう。
ただ黙って言うことを聞いてるだけの人形とでも?


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