苦くて甘い恋愛中毒


要は、何か食べたのだろうか。

――ふとそんなことを考え、我にかえる。
無意識にこんなことを考えるなんて重症どころではない。


私の悪い癖だ。

何をしていても、何を考えていても、そのすべてを彼に結びつけてしまう。

『要は』『要が』『要の』『要と』…………(以後、エンドレス)


どこまでハマっているのだろう、あの男に。
なぜ、抜け出せないのだろう。

こんなことを考えてしまうのは、空きっ腹にアルコールなんか入れたからだ。絶対、そうに違いない。

彼のことを考えないように、思い出したりなんかしないように、無理矢理別のことを考えようとする。
仕事のことだったり、たまたまつけたテレビに映っていた、名前も知らない芸能人の行く末だったり。

そうして、ようやく脳がやっと別のことで起動したかと思うと、今度は目が、耳が、肌が、私に彼を思い出させようとする。
時折見せる柔らかく笑う顔とか、底意地の悪そうな低い声とか、私を本気で壊すつもりなのかと思うほど、力強い腕の感触やその温度。
それから、窒息してしまいそうな激しいキス。


自分のカラダや五感さえ、私の味方をしてくれないなんて、不幸にもほどがある。

この体も頭も感覚も、すべて私のものなはずだ。
決して、あの男のものじゃない。

それを、分かってる?

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