苦くて甘い恋愛中毒
2章
3年前
――時は、7月上旬。
毎日毎日、なんでこんなあほみたいに暑いのか。
国や世界は本当に温暖化対策してるの?
京都議定書はどこいったのよ?
バイト先のカフェはかろうじて冷房をかけているものの、店長直々に店の前の掃き掃除なるものを頼まれてしまい、オアシスから離れ、灼熱の中黙々と手を動かす。
店長、優しそうな顔をして貴方は鬼ですか。
あなたの大事なアルバイトがひとり、軒先で死にかけています。
「菜穂ちゃーん。もう上がっていいよ!」
涼しげな顔をした店長に声をかけられる。
どうせなら掃除の前に上がらせてもらいたかったという文句は押し込み、黒いギャルソンエプロンを外しながら、ロッカールームへ向かう。
朝の九時から六時間労働。
今日は比較的短いけど、休憩は取れないし、怒涛のランチタイムが組み込まれていたから、疲労はピークだった。
とはいえ、バイト以外にとくにすることもないし、別に構わないんだけど。
――大学四年の夏。
単位はゼミ以外取り終わっているし、卒論もそれなりに進んでいる。
ありがたいことにこんなご時世の中、私は希望していた出版社に早々に内定が決まり、就活もすでに終了した。
我ながら、恵まれていると思う。