苦くて甘い恋愛中毒
一日でもっとも暑い昼下がり。
私の汗だって尋常じゃない。
意味もなく街を歩きながら考えるのは皮肉にも夕飯のことで、こんなときにも普通にお腹が減るなんて、つくづくこの体が憎らしい。
流れてくるのは汗ばっかりで、涙なんてものはこれっぽっちも出てこない。
ねぇ、ほんの数十分前に、1年近く付き合った恋人にフラれたのよ?
ちょっとくらい、それっぽく泣いたりしてみたらどうなのよ。
自分にそう突っ込んでしまいたくなる。
大体、そこそこ長く付き合ったのに、たった20分やそこらで関係を清算されるって、それってどうなわけ?
涙が流れてこないのと同様に、私の心を支配しているのは、悲しみでも怒りでもなく、『無』だった。
そのことがすごく、悲しいし虚しい。
もう私の中で、それほどまでに総吾は大した存在ではなくなっていたのか。
はたまた、それはもとからだったのか。
考えれば考えるほど、その事実のほうに泣きたくなってくる。
総吾もそんな私に気づいていたのかもしれない。