苦くて甘い恋愛中毒


総吾と別れた翌日。
泣き腫らしているわけでもなく、至って普通の顔の自分に更に自己嫌悪に陥る。

こんな日に限ってバイトはオフだ。
忙しく動き回っていたら、少しは気も晴れたかもしれないのに。


このまま家にいても、どうせ負のスパイラルに陥るだろうと判断し、気晴らしに大学にでも顔を出してみようと、簡単な身支度を始めたその時、iPhoneが震えた。

『今晩飲みに行こう!私に話すことあるでしょ?』

大学の友人、朋佳からだった。
総吾とのことを言ってるんだろうけど、まだ誰にも言っていないのに、いったいどこから情報仕入れてくるんだか。

わりと顔も名も知れた私たちの破局は、きっと大学では専らの噂なんだろう。
とくに返信せずに既読だけつけ、そのまま家を出た。


――私立宝城学園大学。
私はそこの文学部に在籍している。

四年間通ったこの学校もあと半年程度で卒業だが、まだまだ実感がない。
ゼミやサークルの友人、後輩ととくに用があるわけでもないのに自然と集まりたくさんの時を共に過ごしてきた。

いつか、この時も懐かしく思う日が来るのだろうか。


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