苦くて甘い恋愛中毒
人、ひと、ヒト、人人人……――
何の気なしに訪れたカフェテリアは、よくもまあこれだけ集まったなといっそのこと脱帽したくなるくらいの人で溢れかえっていた。
これだけいれば、そりゃあ友達も後輩もひとりくらいはいそうなものだけど、この中から探し出すのは至難の業だし、恐ろしくめんどくさい。
尋常じゃないくらいの列に並び、ランチを購入すると、なんとか見つけた空席に落ち着いた。
とくに美味くもまずくもない冷麺をすすっていると。
「菜穂ちゃん! 総吾くんといつ別れたの?!」
このくそ暑いのに、大事そうにきつねうどんを抱えた友人・朋佳。
先程のメールの送り主である。
だから、別れたなんていつだれに聞いたのよ。
あれからまだ24時間も経っていないのに。
「……昨日。大体、なんで朋佳がそんなこと知ってんの?」
「あたしだけじゃないよ! 大学中が知ってるって!!」
だから、どうして。
私がそう言う前に朋佳が話し出した。
「そりゃあ噂にもなるよ! 総吾くんと菜穂ちゃんが別れたってだけでもすごいのに、あの〝田所絵里〟に乗り換えたって言うんだから!」
――田所絵里?
あぁ、あの〝スキナオンナ〟か。