苦くて甘い恋愛中毒
「有名なの、その子?」
彼女のことを知らないといった私に、信じられないといった様子で説明してくれる。
「田所絵里は今年のミス宝城! だからこそ噂になってるんだよ?」
へぇ、あの子が。
なるほどね。
ようやく話が繋がった。
つまり、今年のミス宝城であるあの女が、四年前のミス宝城である私の男を盗ったって、世間で噂されているわけだ。
だいたい、あれがグランプリなんて、今年の審査員の基準はどうなってんの?
長いデコ爪に、無駄にラメった化粧。
男に媚びるしか能がないようなあんな女と名を連ねるなんて、私を含め、過去のミスたちが泣くんじゃないだろうか。
あぁ、でも。
そんなアホギャルに男盗られたのは、私だったっけ。
……本当、最悪の気分だわ。
「ごめん、朋佳。やっぱり今日はひとりにさせて」
楽しく飲むような気分にはなれないし、愚痴を言ってすっきりするにはまださすがに時間が浅すぎる。
トレーを返却口に持っていくため歩いていると、仲良くランチをしている総吾と彼女の姿を見つけた。
というか、視界に映った。
私に気づき、気まずそうに笑みを浮かべる元・彼氏。
目が合ってしまうと、無視するわけにもいかない。
仕方なく満面の笑みを浮かべ、手を振ってやった。
少なくとも、隣のオンナよりは、数十倍輝く笑顔を。
(その場にいたギャラリーのおかげで、噂がさらにヒートアップしたのは、言うまでもない)