苦くて甘い恋愛中毒
家に帰ると同時に、役に立たない現代ツールを充電機に差し込み、シャワーへ直行した。
髪やら服やらカラダ中の至るところから、お酒や煙草の匂いが入り混じった何とも言えない香りが漂っており、愛用している香水も混ざり合い、最高のスパイスとして力を発揮してくれている。
(つまり、さらにひどい匂いだということ)
メイクは完全に崩れ落ち、代わりに顔も髪も油や汗でぎとぎとだ。
不快ったらありゃしない。
別にそこまで神経質で潔癖症ではないけれど、いくらなんでもこれはひどい。
申し訳ないとは思ったけれど、バイト先と〝仲山 要〟に連絡を入れるのは後回しにさせてもらう。
今はなにより、一刻も早く清い身に戻らなくては。
入浴後、慣れ親しんだビオレの香りを纏い、ビールではなくミネラルウォーターを取り出し、一気に飲み干す。
アルコール以外の水分を体内に入れたのは、何時間ぶりだろう。
胃の中にダイレクトに染み込んでいくこの感じが、気持ちいい。
ようやく回復したいPhoneと名刺を取り出す。
……って、この人。すごいエリートなんじゃないの?
連絡先が書かれた名刺には、会社名とそのロゴまで一緒に印刷されている。
ついこの間まで就活をしていた私でなくても聞いたことがあるような、大手総合商社だ。
なるほど、あんなマンションにも住めるわけだ。