苦くて甘い恋愛中毒
ふと目に入ったガラスのローテーブルの上に、無造作にコンビニ弁当が置かれている。
「いつもコンビニ弁当なんですか?」
口は開かずとも、目の動きだけでそうだと分かった。
仕事が忙しいんだろうということは私にだって分かるけど、毎日あれだなんていくらなんでも不健康すぎる。
「そんなことない。スーパーの惣菜のときもあるよ。もともと食に関心薄いっていうか、でもまぁ食わなきゃ仕事もできないし」
コンビニ弁当もスーパーの惣菜もたいして変わりはないし、そもそも人間は仕事をするために食べるものでもないと思う。
だいたい、社会人なんて、体が資本なんじゃないの?
「なにか……作りましょうか?」
つい口をついて出た言葉に自分でも驚いて、慌てて手で口を覆った。
何言ってんだ、私。
でも言ってしまったことが取り消せるわけでもない。
「お前、料理できんの?」
その言葉に少しムッとする。
料理もできない女だと思ってるのか。
「料理くらいできます。そうじゃなくても、こんな食生活普通に心配します」
ムキになって話す私にまたも吹き出す。
さっきとは違って、苛立ちが込み上げる。
別におもしろいこと言ったおぼえないんですけど。
「悪い、悪い。作ってくれんの?」
考えてることが顔に出てるのか、まるで子供でもあやすように言う。
やっぱり、この人は大人だ。
自分がひどく幼く思えてくる。
「……キッチン貸してください。こんなのでよければお礼です」
勢いで言ってしまったけど、何を作ろう?
というより、何が作れる?
どう見ても食材なんかありやしない。
冷蔵庫の中に入ってるのは、ビールやチューハイなどの酒類と少量のつまみのみ。
かろうじて米はあるけど、白米だけ出して料理だなんて言うわけにもいかない。
お米と使えそうなつまみを並べて、頭を悩ませる。
そんなとき、無造作に置かれた段ボールが視界に入る。
――なんだ、あれ?