苦くて甘い恋愛中毒
「私ももう冷めてたの。だから本当にもう平気。心配してくれてありがとう」
そう言ってまた目の前のパスタに向き直る。
いまいち煮え切らないようだったけど、朋佳もやっと食事に集中した。
650円の格安ランチを平らげて、食後の紅茶を楽しんでいると、思い出したように朋佳が尋ねてきた。
「そういえばさ、大学行った帰り菜穂ちゃんどこにいたの? 携帯全然繋がらなかったからちょっと気になってたんだよね」
思いがけない質問に驚いて、コーヒーが通る道すじを間違え、盛大に咳き込む。
なんだ、このベタなリアクションは。
「あ、あやしー! なんかあったでしょ!」
「……何もないわよ! ちょっと飲みに行ってたの。携帯も充電切れちゃって」
何とか平常心を保ち、切り返す。
少しでもボロを出したら、朋佳のことだからきっと全部吐くまで離してもらえない。
(こういうときの朋佳はそれはそれはしつこいのだ)
「嘘! あたし、そうゆうの鋭いのよ。菜穂ちゃんが本当のこと言うまで離さないからね、ぜーったい!」
ほら、案の定。
テーブルに乗せていた私の手首を掴んでこんなことを言い出す始末。
適当に答えて、さっさと解放してもらうのが良策といえるだろう。
でないと、本気で閉店時間までここから出してもらえないかもしれない。