苦くて甘い恋愛中毒
「すきかどうかは、正直よく分からない。でも、また会いたいとは思う」
これがなにを意味するのかまだわからないけれど、私の今の一番素直な気持ちを告白すると朋佳は静かに微笑んだ。
「そう思うなら連絡すればいいじゃない。それに、会えば本当にそうなのかわかるでしょ?」
簡単に言う朋佳に本気で尊敬の念を抱いた。
朋佳は所謂恋愛体質ってやつで、その上極度の恋愛至上主義だ。
気に入った人には脇目もふらず一直線。
たとえフラれたり別れたりしても、一晩泣き明かしたら開き直ってまた次の恋を探す。
その行動力は本当にすごいと思う。
「でも、あれから2週間以上経ってるんだよ? 今更っていうか、私のことなんか覚えてないかもしれないし。大体、連絡する理由もない」
うだうだとこのようなことを言う。
今まで恋愛にそれほど重点をおいて生きてこなかったうえに、なんとなく付き合ってばかりきたから、こういう時どうしていいかまったく分からない。
〝ガキのままごと恋愛〟
まったく彼の言う通りだ。
もうすぐ22になるっていうのに、恋愛の仕方ひとつまともにわからないなんて。
「菜穂ちゃん、中学生みたいなこと言わないでよ。今までそれなりに恋愛してきたでしょ?」
朋佳に呆れられてしまった。
でも自分でもそう思う。これじゃ中学生と言われても仕方ない。
「そんな本気で恋愛したことなんかないもん」
こんなことを言っている自分にも、こんな状況にも。
なんだかとても恥ずかしくなって、思わず顔を赤らめてしまった。
こんなの、私らしくない。
「なんでもいいじゃん、理由なんて。あー、菜穂ちゃんとこんな話ができる日が来るなんて思わなかったなぁ」
そういいながら私の携帯に手をのばしていじっている。
私たちの間ではこれが当たり前で、お互いがお互いの携帯をいじっていても普通なのだ。
怪しげな顔をした親友が、恐ろしい企みをしてるとは夢にも思わずに。