苦くて甘い恋愛中毒


「はい、情けない菜穂ちゃんの代わりにメール送ってあげたよ?」

そう言って『メールを送信しました』という画面そのままのそれを私に手渡す。
恐ろしいことを平然と口にして悪魔のような笑顔を浮かべた彼女。

「送ったって? 誰に? 何を?」

今、私が想定していることがどうか夢であってほしいと願いながら、恐る恐る携帯に目をやる。


『お久しぶりです☆ 先日はありがとうございました! あれからずっと、どうしているか気になってメールしちゃいました~。よかったら、またお会いできませんか??』


……ほんとに悪魔だ、この女!!

「朋佳っ! 何てことしてくれたのよ!」

「だって菜穂ちゃんこんなこと、自分じゃ絶対にしないでしょ? だから代わりにやってあげたの」

えらいでしょ? とご褒美を待っている子犬のような顔をして得意げに言う。

返す言葉も見つからない。
この場に充満するかのような、長い長いため息をついて、もう一度画面に目をやった。

普段の私なら絶対に打たないような、可愛らしくて素直すぎる文面が何回見ても映し出されている。

どうしてくれるのよ、これ。



< 46 / 119 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop