苦くて甘い恋愛中毒
「はい、情けない菜穂ちゃんの代わりにメール送ってあげたよ?」
そう言って『メールを送信しました』という画面そのままのそれを私に手渡す。
恐ろしいことを平然と口にして悪魔のような笑顔を浮かべた彼女。
「送ったって? 誰に? 何を?」
今、私が想定していることがどうか夢であってほしいと願いながら、恐る恐る携帯に目をやる。
『お久しぶりです☆ 先日はありがとうございました! あれからずっと、どうしているか気になってメールしちゃいました~。よかったら、またお会いできませんか??』
……ほんとに悪魔だ、この女!!
「朋佳っ! 何てことしてくれたのよ!」
「だって菜穂ちゃんこんなこと、自分じゃ絶対にしないでしょ? だから代わりにやってあげたの」
えらいでしょ? とご褒美を待っている子犬のような顔をして得意げに言う。
返す言葉も見つからない。
この場に充満するかのような、長い長いため息をついて、もう一度画面に目をやった。
普段の私なら絶対に打たないような、可愛らしくて素直すぎる文面が何回見ても映し出されている。
どうしてくれるのよ、これ。