苦くて甘い恋愛中毒
「あっ!」
無機質な携帯の画面表示に嘆いていると、正反対の感情的な高い驚きの声が聞こえた。
そしてそれは、明らかに私たちに向けられている。
朋佳と同時に顔を上げるとそこにはほかでもない、〝田所絵里〟がいた。
一見気まずそうな申し訳なさそうな(98.7%作り物だと思う)顔をしていたが、次の瞬間にはこんなことを吐かし始めた。
「あの……本当にすみませんでした! おふたりが付き合ってたのは、絵里も知ってたんすけど、もう別れたって聞いてて……。だから、絵里もショックだったんです」
ごめんなさい、とうるうると涙を浮かべ、その内心は私への優越感に浸っているであろうこの女に是非とも賞賛の拍手を送りたい。
もちろんその幼稚園児のお遊戯会レベルの演技や涙に対してではなく、自分の前にある事実しか信じない彼女のその純粋な心にだ。
「いいのよ、気にしないで。私のお下がりでよければ、大事にしてあげて」
私の反応が予想外だったんだろう。
悔しそうな彼女の顔をみて少し気が晴れた。