苦くて甘い恋愛中毒
いつも合鍵で入っていたから、要の家のチャイムを鳴らすのなんて久しぶりだ。
なんだか少し緊張しながら、彼が出てくるのを待つ。
入ってくればいいのに、そういって笑う要の後を追って部屋へと入ると、妙にきれいな部屋に違和感を覚える。
珍しいなと思ったが、よく考えると私が前に来てから、せいぜい3日程度しか経っていないのだ。
こんなにハイペースで要に会う、これも初めてかもしれない。
いつもは一度会ってから最低でも10日〜半月は会えないのに。
ソファーの前に置かれているガラスのローテーブル。
今日はそこも不自然なほどすっきりと片付いている。
いつもはPCをはじめ、書類やらデータやらあらゆるもので溢れかえっているはずのそれの原形を見たのなんていつぶりだろう。
「ねぇ、今日どうしたの? 要が仕事ないなんて珍しいどころじゃなくない?」
あまりにいつもとは違うこの状況に、ついに口を開いた。
期待するな、ときちんと自分に言い聞かせて。
「出張後の処理も終わったし。休日出勤もなしで、久々にゆっくりした週末だわ」
ソファーに腰を下ろして、息を吐き出しながら答える。
帰国してからも仕事仕事で、ろくに休めていないのかもしれない。
疲れが溜まっているのが見て取れる。
「だったらなおさら、私いない方がいいんじゃないの?」
彼を心配して言ったはずだったのに、またもかわいくない言葉に変換される。
こんなことが言いたいんじゃないのに。
3年以上経っても、相変わらず可愛げなんて身につけられていない。
なのに。