苦くて甘い恋愛中毒
「別にいいだろ。今日くらい、用事抜きで呼び出しても」
どうして?
咄嗟にそう思った。
だって、要が私の誕生日を知ってるとは思えなかった。
これまで会うことはおろか、誕生日に電話のひとつもなかったのに。
「要……、知ってたの? 私の誕生日」
「あのなぁ、3年以上も一緒にいて、知らない方がおかしいだろ。去年も一昨年も仕事あったけど、今年は奇跡的に早く終わったから」
本当に、奇跡だ。
要が誕生日と分かってて私に連絡をくれた。
うれしいなんて言葉じゃ全然足りない。
胸が締め付けられるような感じがして、私は我慢できずに要に抱きついた。
それはいつも胸の中でつっかえているような、切ない痛みなんかじゃなくて。
ただ心の底から嬉しくて愛おしくて。
彼の胸に顔を埋めて「ありがと」とつぶやくので精いっぱいだった。
その後、要はいつものように私を抱いた。
なのに、私を抱きしめる腕も。
とろけそうになる唇も。
熱っぽい瞳も、全部。
いつもよりも優しく感じるのは気のせいじゃなかったと、信じたい。