苦くて甘い恋愛中毒
夢の続きとナンパ男
「ん、……」
朝日の眩しさで目を覚ますと、隣にはやはり要はいなかった。
この部屋に泊まることはあっても、一緒に朝を迎えることはない。
それはこの3年半での不変の事実だ。
でも、今日はいつもよりさみしさを感じることはなかった。
床やベットに点々と脱ぎ散らかされた服や下着を拾い集め、身につける。
今この状況下の最優先事項は、一刻も早く家に帰り、シャワーを浴びることだ。
その目的遂行のため、早々と寝室を後にし、この家を出る、ところだった。
寝室からリビングへと通じる扉を開けると、そこにはまだシャワーから出てきたばかりであろう、要がいた。
「か、なめ……? なんで、いるの?」
「ここ。俺の家なんだけど」
そういうことを言ってるんじゃないんだけど。
そうつっこみたくなったが、口が思うように動いてくれない。
驚きを隠せない私と、至って普通な要。
その温度差を完全に無視して、先に口を開いたのは彼のほうだった。
「なにをそんなに驚いてんの、変な顔」
そう言って、私の額を軽く叩く。
そりゃあ寝起きだし、ちょっとかなり動揺して口ぱくぱくして、正直自分でもひどい顔だと思うけど。
でも、仮にも女に向かって〝変な顔〟はないんじゃない?