苦くて甘い恋愛中毒
「いった……仕方ないでしょ、寝起きだもん! 大体、なんで要がいるのよ?」
今まで、いたことなんてなかったじゃない。
どれだけ心の中で願っても。
「今日は午後からでいいんだってさ。どっちにしろ休日出勤には変わりないけど」
コーヒーを啜る姿でさえ、悔しいけど様になる。
数えきれないくらい肌を重ねてきたのに。
お前も飲む? なんて、そんな甘温い会話が妙に恥ずかしくて照れてしまう。
受けとったコーヒーを飲みながら、ちらっと要の方を見ると、タオルで髪を拭きながら同じようにコーヒーをすすっている。
もうこれ以上どきどきすることなんて、そうそうないだろうと思ってたのに。
この男はどこまでもあたしを骨抜きにする。
3年もの間で見ることのなかった姿を、今になってみせるなんて。
――やっぱり、ずるい。
その後、午後出勤だと言っていた要に合わせて一緒に家を出た。
はじめてのことばっかりで、なんか調子が狂う。
要は家まで送ると言ってくれたけど、それは流石に申し訳なくてタクシーで帰るから、と断った。
要も何とか納得したようで、愛車に乗って仕事へと向かった。
最後に最高に淫らなキスを残して。
(残されたあたしが、しばらくその場でフリーズしてしまったことは言うまでもない)