苦くて甘い恋愛中毒
「じゃあ、あの男はあんたの誕生日だって知ってて連絡してきたってわけだ」
こくりとうなずくと同時に、自分の頬が自然と緩んでいることにも気付く。
「幸せ気分に水差して悪いけどさ。あんたはレベルが低いのよ」
レベル? なんの?
そう言葉には出さずとも、理恵には私の心の中が読めたようだった。
「あの男がちょっとはあんたを大事に思ってることは分かった。でも所詮それだけよ。〝愛されてる〟って言える? あんたにとっては一大事かも知れないけど、世間一般じゃそうは言わないわ」
何も返答しない私に、小さく溜め息をついて続ける。
「前にも言ったけど、あんたは周りを見なさすぎなのよ。あの男しか目に入ってない。今はそれでよくてもいつか限界が来る。女は愛されてこそ、なんだからね」
そりゃあ、理恵は自分にベタ惚れの年下くんと仲良くやってるんだから、そう思うのも無理はないけど。
それでなくても、いつも理恵の話には妙な説得力がある。
それに、ただでさえ、昨日朋佳にもまったく同じことを言われたばかりだ。
私のことをよく分かっていて、私のことを思ってくれているふたりに言われれば、さすがにへこむ。
でも、私はやっぱり、自分の気持ちと自分の目で見た要のことを信じたいんだ。
時間はかかったけど、今やっと素直にそう思える。
「じゃあ、今はそれでいいや。流されるところまで流されてみる」
「ねぇ、あたしの話聞いてた?」
聞いてたよ。
でもさ、理恵。
地獄に突き落とすくらいに私を苦しめるのは要だけど、その何倍も私を幸せにできるのも、要だけだと思うの。