苦くて甘い恋愛中毒
ストールを羽織って席を後にする。
会計は理恵が済ませていってくれたようだ。
なかなかの上機嫌で、ウィンドウショッピングを楽しんでいた時だった。
「ねえ、おねーさん。ご飯でも行かない?」
は? なにこれ?
いい感じにオシャレな服装に、人あたりのよさそうな笑顔。
茶色の髪は太陽に照らされて、よりいっそう色素が薄く見える。
多分、十人いたら八人くらいは〝かっこいい〟と判断するだろう。
(残念ながら私は残りのふたりだけど)
で、この状況から察するに、私は今このイケメンにナンパされている。
まだまだイケるじゃん、私! なんて、たとえ昨日二十五を迎えたとしても、そこまで物事を肯定的に受け入れるほどのキャパシティーはまだ持ち合わせていない。
ナンパは私の人生の中で常に〝嫌いなものランキング〟の上位に居座り続けており、相手がいくらタイプだったとしても、ナンパしてきた時点で、即アウト。
要するに、私はナンパというものが大嫌いなのだ。
返答するのも腹立たしくて、なにも言わずに方向転換する。
あぁ、あっちに行きたいお店があったのに。