苦くて甘い恋愛中毒
時の経過が雑すぎるけれど、あれから約2ヶ月。
とくに変わりのない生活を送っているが、強いてあげるとするならば、私の五十嵐さんへの評価の向上についてだろう。
相変わらず仕事中でない時はちゃらいし、私が〝五十嵐さん〟と呼び始めたのをいいことに、最近では彼のファーストネームである〝慧〟と呼ばせたがるような男ではあるが。
それでもひとたび仕事モードになると、別人のように優秀ぶりを発揮するのだ。
我が部の業績がぐんと上がったのは彼のおかげだと言っても、過言ではない。
それに比例するかのように、彼の社内人気も鰻登りだ。
今では彼のアシスタントとして、とても充実した毎日を過ごしている。
そうは言っても、やはり充実した毎日=多忙に繋がるのが世の常なわけで。
本日もオフィスに残り、残業中である。
あの誕生日の日がまるで夢だったかのように、要からの連絡は途絶えていた。
2か月近くも音沙汰がないのははじめてで、さすがに何度か私から連絡しようと試みたけれど、結局そんな勇気もなく、鳴らないiPhoneを気にして時間ばかりが過ぎていった。