苦くて甘い恋愛中毒
受付で招待状を確認してもらい、いよいよ中へ入る。
「うわっ! すごいー……」
華やかな会場を彩る色とりどりのドレス。
さすがは高級ホテルの展望レストラン。
小さいときに絵本で見た舞踏会に紛れ込んだみたいだ。
五十嵐さんにそう伝えると、意外とロマンチストだねと小馬鹿にされてしまった。
「菜穂ちゃん。見とれるのは分かるけど、せっかくのこんな料理、食べなきゃ損だよ」
会場全体が立食パーティーになっていて、様々な種類の料理がたくさん盛り付けられていた。
そうだ、こんな高級料理、次にいつ食べれるか分からない。
庶民心がむくむくと沸き上がり、色気より食い気を優先させることにした。
パーティー開始から約30分後、辺りが急に薄暗くなったかと思うと、正面の舞台にスポットライトがあてられ、控えめなオフホワイトのワンピースドレスを身に纏ったきれいな女の人が壇上に上がった。
「本日はお忙しい中、当レストランの50周年記念パーティーにお越しいただきまして、誠にありがとうございます。」
丁寧にお辞儀をすると、皆食事を止めて、拍手を送った。
「ここで、オーナーである木下より皆様にご挨拶がございます」
そう言って舞台右方に手をやると、今度はオーナーに合わせてスポットライトが移動する。
オーナーがマイクの前に立つと、一斉に拍手が沸きあがる。
私たちもオーナーの方へ向き直り、感謝と祝福の意味をこめて心から拍手を送った。